2025/05/08

寝台列車、昼間に走る(カシオペア引退記念・再掲)

  今年6月をもって寝台特急カシオペアが引退するとのニュースを知り、過去に書いた「ひまひま日記」というものから、カシオペアに乗車した際の話を再掲します。(内容は2022年2月当時のものです)

 寝台特急カシオペアの昼行ツアーがあると聞き、これは乗りたい!と思い、ええーいと思い切って申し込んでしまいました。

 カシオペアに乗車するのは実は今回が2度目。現役の定期列車時代には乗ったことが無く、前回乗ったのは2017年の正月だから5年前。弟の就職が決まって、じゃーお祝いをしよう、などという名目で乗ったのでした。しかし、肝心の弟が風邪をひいてしまい、せっかくの寝台列車なのにほとんど寝て過ごしていた。いや、寝台だから寝てていいんだけど。

  前回は青函トンネルをくぐって、現役時代と同じ札幌までの行程でした。今回はぐっと短くて仙台まで。でも、珍しい常磐線経由のルートで、しかも昼行。ぼくは寝台列車に乗るといつもグーグー寝てしまうのだけど(タモリさんは寝ないと言っていたなあ。さすが鉄道マニアの鑑!)、今回は昼間だから寝ないで車窓を眺めていられるでしょう。せっかくのカシオペア、起きて乗って元を取らないと!

 そんなわけで楽しみにしていたのですが、折からのオミクロン感染急拡大、しかも出発前日は関東地方に大雪の予報。催行は当日の朝確定するとのことで、不安な朝を迎えました。

 翌朝、催行決定のメールが。はやる気持ちを抑えて集合場所の上野へ向かう。横須賀は全く雪は無かったのですが、都内はうっすらと雪化粧をしていました。JR車内の電光掲示板には「常磐線は倒竹のため運転見合わせ」の情報が。と、倒竹?? 雪はやんだのに、前途に暗雲が立ちこめてきた。


 とりあえず上野駅に着き、受付を済ませます。今のところ運転する予定なので、列車が入線したら車内でお待ちくださいとのこと。周りの人たちを見ると、同業者(いわゆる鉄オタ)がちらほら。まあ、今回のツアー、ほんとに列車に乗るだけであって観光も宿泊も全く無く、そりゃー一般人(非鉄の方々)は申し込まないだろうなあというものです。

 そして列車入線時刻。カシオペアが、丸っこいシルバーの車体を光らせて、機関車に押されてしずしずと入線してきました。かつてはこのホームから、北斗星やあけぼのに乗って旅立ったんだよなあ…(涙)。

  車内整備の後、いよいよ車内に乗り込みます。嬉しいことに今回は2階の個室(前回は1階でした)。もう子どものようにはしゃぎたい気持ちが抑えられません(必死に抑えますけど)。

 しかし、いつまで経っても運転再開の見込みは立たず、カシオペアは上野駅ホームに足止め。これ、このままだと結局運転中止になって「カシオペアに乗ってきた(動かなかったけど)」というオチになるんじゃないか。不安になりつつ、朝も早かったので眠くなり、寝台で横になって過ごす(結局寝るのです)。

  1時間以上経って、ようやく運転再開。カシオペアもついに発車です。そして、車窓を眺めて驚いた。ホームの先端部や、沿線の線路脇、線路をまたぐ陸橋など、あらゆる場所に撮り鉄の皆さんの大群が! そうか、カシオペアが白昼堂々、常磐線を北上する機会は希少なわけですよね。カシオペア乗車目的で申し込んだので、あまりその部分には注目していなかったのです。

 カシオペアは福島県内に入り、原発事故や津波災害から長期間の運休を経て復旧した区間を走行します。乗りながら、かつての旅のことを思い出す。

 このひまひま日記でも書いたと思いますが、震災前、原発のある町の山間の温泉宿に泊まったこと。いつものように列車旅が目的で、原発の存在なんて全く意識していなかった。宿のご主人はとても親切で、でも帰りの送迎車を走らせながら「この町に民主主義なんてありませんよ」と、つぶやくように言っていたこと。当時はぼんやり聞いていたけど、今になってその重みを理解する。あのご主人は今頃どうしているんだろう。

 帰りに乗った列車では、年配の女性が病気の犬をカゴに入れて運んでいた。普段は見知らぬ人に声などかけないんだけど、何だかその時は、犬の寂しそうな鳴き声が気になって話しかけた。持病があるその犬を、列車に乗って定期的に病院へ連れて行かないとならないとのことだった。着いた駅では、顔なじみらしい駅員さんが、女性からカゴを受け取って列車から下ろしてあげていた。

 あの女性も犬も、そして駅員さんも、その後どうなったのかなあ…。

  いろいろ思い出しているうちに、弁当と一緒に飲んだワインが回ってきて、座ったまま寝てしまった。結局、夜行だろうと昼行だろうと寝てしまうのです。

 気がついたら、終点仙台はもう間もなく。鉄道の旅はあっという間に終わってしまいます。いつの日か、また寝台列車に乗って、かつてのようにもっと北まで行ってみたい。


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