昨年の10月から、昔の大河ドラマ『獅子の時代』を、レンタルDVDで少しずつ見てきました(1980年の作品、当時私は3~4歳。当然見た記憶はありません)。週1~2本のペースで見ているうちに、昨年12月には作者の山田太一さんが亡くなってしまい、そして今年の3月にようやく全51話を見終わりました。
もともと、山田太一さんというと大御所のイメージがあって、自分より上の世代が見るドラマなんだろうな…という先入観もあって今まで何となくスルーしてきたのですが、一昨年前に『早春スケッチブック』というドラマを見て、これがすごく面白かった。
なんで『早春スケッチブック』を見ようと思ったかと言うと、単純に、自分の生まれた相鉄沿線が舞台になっているからです。
幼稚園児の時、先生が「幼稚園バスと園長先生が出てくるから、遅い時間だけど、お母さんお父さんと一緒に見てね!」と言うもんだから眠い目こすりつつ見てみたのですが、まあ、幼稚園児が見て楽しいようなドラマじゃない。(女の子がケンカに負けて血を流し、頭に包帯巻いてるシーンが子供心にけっこう衝撃的でした。改めて見たら、やっぱり衝撃的(笑)。山田太一ドラマの登場人物って意外と激しいのです。)
そんなわけで、結局2話以降は見た覚えが無いのですが、ドラママニアの間では不朽の名作と言われているとの情報をネット上でいくつか目にして、いつか見たいと思いつつ、一昨年前にようやく見た…というわけです。
(その時の感想は、別の日記(→こちら)に書いたので、今回は割愛。ちなみに、どうして相鉄沿線が舞台になったかと言うと、撮影許可を出してくれる鉄道会社が当時は京王と相鉄しか無くて、相鉄の駅名を横浜から順に調べて、「希望ヶ丘、なんて嘘くさい名前!」ということで選んだ…というような情報をネット上で見かけました。)
で、感想を一言でいうと、面白かった(小学生の感想か)。主人公が架空の人物という異色の大河ドラマなのですが、毎回45分間があっという間。展開はところどころ強引なのですが、それが気にならない力がある。私は歴史ちんぷんかんぷん人間なので、むしろ歴史の知識が無くても楽しめるという意味でも、このドラマが好きなのだと思う。
しかし、放送当時の大河ドラマとしては視聴率は悪かったそうで、プロデューサーも後年、「世間の反応は冷たかった」と書いていた。
オリキャラ大活躍、女性キャラ多数登場、一方で歴史上の人物の活躍も、戦闘シーンも、権謀術数の政治劇もごくわずか…大河ドラママニアが嫌う要素がたくさん入っているこのドラマ。視聴率が低い大河は今も昔も叩きの対象、近年で言えば『平清盛』や『いだてん』同様に叩かれたんじゃないかなあと思います(私はどれも好きですが)。
ラスト2回で、物語は劇的に急展開し、「明治維新の光と影を描く」という本作のテーマが明確に出てきます。そして最終回。こんなに熱くて真っすぐな大河ドラマの最終回は見たことない(と言うほど、たくさん見ているわけでは無いけれど)。最後のナレーションがまたいいのです(三谷幸喜さんが、山田さんの追悼番組に寄せたコメントでこのナレーションを取り上げていた)。その内容は各自検索していただくとして…。
展開が強引と先述しましたけど、最終回を見て、いやこれはファンタジーなのかも知れないと思った。ドラえもんがよく言われる「子どもに夢を与えるファンタジー」なら、これは「大人に希望を与えるファンタジー」。どちらも、現実の厳しさも描いているし。そういえば、作者のお二方、どことなく雰囲気が似ているような(似てないか??)。
最後に。山田太一さんが「もう大河はやりたくない。ぼくには向いていない」と言っていたとどこかで目にして、もしかして『獅子の時代』はあまり振り返りたくない作品、黒歴史なのかなあ…と思っていたけど、NHKの特集番組で、晩年のインタビューでこの作品について熱く語っていたと知り、ちょっと安心…というか嬉しくなった。
「僕は、あの時代を負けた側から書くっていうことをしている作家がいないっていうことに驚きましたね。もっとなんかあとに続く者がたくさんいると思っていたら、全然いない」と。ほんとに、後に続く人が全然いないのが寂しい。